2026年2月05日

「喘息の治療を始めたけれど、なかなか症状が改善しない」「吸入薬を使っているが、これで正しいのか不安」そんなお悩みをお持ちではありませんか?
実は、喘息治療は近年大きく進歩しており、適切な治療により9割以上の患者さんで良好な症状コントロールが可能になっています。しかし、正しい治療法や薬の使い方を理解していなければ、十分な効果は期待できません。
この記事では、喘息の最新治療法から吸入薬の正しい使い方、発作時の対処法まで、症状のコントロール改善に必要な情報を詳しく解説いたします。
1. 喘息治療の基本方針

治療の目標
症状のコントロールが最重要目標です。
- 日常生活に支障がない
- 夜間覚醒がない
- 運動制限がない
- 発作による救急受診がない
長期的な目標
- 気道炎症の抑制
- 気道リモデリングの防止
- 肺機能の維持
- QOL(生活の質)の向上
治療戦略
ステップ治療が基本となります。症状の重症度に応じて、段階的に治療を調整していく方法です。
軽症間欠型 → 軽症持続型 → 中等症持続型 → 重症持続型
それぞれのステップで推奨される治療法が定められており、症状の改善や悪化に応じて治療を調整します。
2. 最新の薬物療法

長期管理薬(コントローラー)
吸入ステロイド薬(ICS)が治療の中心です。
- 気道炎症を抑制する最も重要な薬剤
- 毎日継続使用することで効果を発揮
- 副作用は適切な使用で最小限に抑制可能
長時間作用性β2刺激薬(LABA)
- 気管支拡張作用が長時間持続(12-24時間)
- ICSとの配合薬が一般的
- 単独使用は原則禁止
ICS/LABA配合薬の種類
- フルチカゾン/サルメテロール(アドエア®)
- ブデソニド/ホルモテロール(シムビコート®)
- フルチカゾンフランカルボン酸エステル/ビランテロール(レルベア®)
新しい治療選択肢
生物学的製剤が重症喘息に革新をもたらしています。
抗IgE抗体(オマリズマブ)
- アレルギー性喘息に有効
- IgE値と体重により投与量決定
- 4週間ごとの皮下注射
抗IL-5抗体
- 好酸球性喘息に有効
- メポリズマブ(ヌーカラ®)
- レスリズマブ(シンクエア®)
抗IL-4/IL-13受容体抗体(デュピルマブ)
- Th2型喘息に広く有効
- アトピー性皮膚炎の合併例にも効果的
発作治療薬(リリーバー)
短時間作用性β2刺激薬(吸入薬)
- サルブタモール(ベネトリン®、サルタノール®)
- 発作時の緊急使用
- 15分以内に効果発現
短時間作用性抗コリン薬
- イプラトロピウム(アトロベント®)
- 吸入薬との併用で相加効果
3. 吸入薬の正しい使い方

吸入薬の効果を最大限に発揮するため、正しい使用法の習得が極めて重要です。
加圧噴霧式定量吸入器(pMDI)
基本的な使用手順
- キャップを外し、薬剤をよく振る(5回程度)
- ゆっくりと息を吐く
- 吸入器を口にくわえ、しっかりと唇で密封
- 息を吸い始めると同時に薬剤を噴霧
- ゆっくりと深く吸い込む(3-5秒間)
- 10秒間息を止める
- ゆっくりと息を吐く
重要なポイント
- 吸入と噴霧のタイミング合わせが最重要
- スペーサーの使用を推奨
- 使用後はうがいを必ず実施
ドライパウダー吸入器(DPI)
主な種類と特徴
- ディスカス®:レバー操作で薬剤準備
- タービュヘイラー®:本体をひねって準備
- ツイストヘラー®:簡便な操作性
使用時の注意点
- 湿気を避けて保管
- 強く速い吸気が必要
- 薬剤が残っていても音がしないことがある
スペーサーの活用
スペーサーの効果
- 吸入と噴霧のタイミング調整が不要
- 口腔・咽頭への薬剤付着を減少
- 肺への薬剤到達率向上
- 副作用リスクの軽減
使用上の注意
- 静電気防止のため定期的に洗浄
- 個人専用として使用
- 携帯用と自宅用の使い分け
4. 発作時の対処法

喘息発作時の適切な対応により、症状の悪化を防ぎ、早期回復を図ることができます。
発作の重症度判定
軽症発作
- 歩行可能、会話可能
- 呼吸数軽度増加
- 脈拍数100回/分未満
中等症発作
- 歩行時息切れ、短い会話のみ可能
- 呼吸数増加(25回/分以上)
- 脈拍数100-120回/分
重症発作
- 歩行困難、単語での会話のみ
- 著明な呼吸困難
- 脈拍数120回/分以上
生命に危険な発作
- 話すことができない
- 意識レベル低下
- チアノーゼ出現
段階的治療対応
第1段階(軽症発作)
- SABA吸入(2-4puff)
- 15-20分間経過観察
- 効果不十分なら追加吸入
第2段階(効果不十分時)
- SABA吸入継続(20分ごと)
- 全身ステロイド薬の考慮
- 医療機関への連絡検討
第3段階(重症発作)
- 救急要請(119番通報)
- SABA継続吸入
- 酸素投与
- 全身ステロイド薬投与
緊急受診の判断基準
即座に救急車を呼ぶべき状況
- 意識レベルの低下
- 話すことができない
- 唇や爪が青い(チアノーゼ)
- SABA使用後も症状改善なし
緊急受診を考慮すべき状況
- 中等症発作が持続
- 発作頻度の増加
- 夜間の症状悪化
- 日常生活への支障増大
5. 長期管理のポイント

良好な症状コントロールを維持するため、以下のポイントが重要です。
服薬管理
継続性の重要性
- 症状がなくても毎日使用
- 自己判断での中断は禁物
- 薬剤の残量確認を習慣化
服薬記録の活用
- 使用時刻の記録
- 症状の変化を記録
- 副作用の有無を記録
環境整備
室内環境の改善
- 定期的な掃除(週1-2回)
- 寝具の高温洗濯(60度以上)
- 湿度管理(50-60%)
- ペットとの接触回避
アレルゲン回避
- ダニ対策:防ダニシーツ使用
- カビ対策:浴室・台所の換気
- 花粉対策:窓閉めエアコン使用
生活習慣の改善
運動の推奨
- 有酸素運動が中心
- 運動前のウォームアップ
- 予防薬の事前使用
- 症状出現時は中止
ストレス管理
- 規則正しい生活リズム
- 十分な睡眠確保
- リラクゼーション技法
- 趣味・娯楽の時間確保
6. 治療効果の判定
定期的な評価により、治療方針の調整を行います。
症状コントロール評価
喘息コントロールテスト(ACT)
- 5つの質問による簡便な評価法
- 25点満点中20点以上で良好
- 定期的(月1回程度)な実施を推奨
評価項目
- 日常活動への影響
- 息切れの頻度
- 夜間症状の有無
- 救急薬の使用頻度
- 自己評価
客観的評価
肺機能検査
- ピークフロー値の測定
- スパイロメトリー検査
- 定期的(3-6ヶ月)な実施
呼気NO測定:
- 気道炎症の評価
- 治療効果の判定
- 薬剤調整の参考
治療ステップの調整
ステップアップの適応
- 症状コントロール不良が4-6週継続
- 発作頻度の増加
- 肺機能の悪化
- QOLの低下
ステップダウンの適応
- 良好なコントロール3ヶ月以上継続
- 肺機能安定
- 患者の希望
- 副作用への懸念
よくある質問(FAQ)

Q1. 吸入ステロイド薬の副作用は心配ありませんか?
A1. 吸入ステロイド薬は局所作用が主体で、適切な使用方法(使用後のうがい、スペーサー使用)により副作用は最小限に抑えられます。口腔カンジダ症や嗄声などの局所副作用はありますが、全身への影響は内服薬に比べて極めて少ないです。
Q2. 症状が良くなったら薬をやめても大丈夫ですか?
A2. 症状が改善しても、喘息の根本的な気道炎症は続いています。自己判断で薬を中断すると、症状の悪化や発作のリスクが高まります。医師と相談の上で段階的な減量を行うことが重要です。
Q3. 妊娠中でも喘息の薬は使用できますか?
A3. 妊娠中でも適切にコントロールされた喘息治療は胎児にとって安全です。むしろ、未治療の喘息による低酸素状態の方が胎児に悪影響を与える可能性があります。妊娠の可能性がある場合は必ず医師にご相談ください。
Q4. 発作時に薬が効かない場合はどうすればよいですか?
A4. SABAを使用しても症状が改善しない、または悪化する場合は、直ちに医療機関を受診するか救急車を呼んでください。特に意識レベルの低下やチアノーゼが見られる場合は、生命に関わる重篤な状態の可能性があります。
Q5. 漢方薬やサプリメントは喘息に効果がありますか?
A5. 一部の漢方薬には補助的な効果が報告されていますが、標準治療の代替にはなりません。サプリメントについても科学的根拠は限定的です。これらを使用する場合でも、必ず主治医と相談し、標準治療を継続することが重要です。
まとめ
喘息治療は吸入ステロイド薬を中心とした長期管理薬により、大部分の患者さんで良好なコントロールが可能です。重要なのは正しい吸入手技の習得、継続的な服薬、そして定期的な評価による治療調整です。
また、発作時には重症度に応じた段階的対応が必要で、特に重症発作時は迅速な医療機関受診が生命を救うことにつながります。
治療に関して疑問や不安がある場合は、遠慮なく医師や薬剤師に相談し、一緒に最適な治療法を見つけていきましょう。
この記事の監修医
永松 裕紀 医師
池袋駅前内科・皮膚科クリニック 院長
東京医科大学医学部医学科卒業後、東京医科大学八王子医療センターおよび
国際医療福祉大学三田病院にて、呼吸器外科診療に従事。