形成外科
形成外科

形成外科は身体に生じた組織の異常や変形、欠損、あるいは見た目の不満足に対して、様々な手法や特殊な技術を駆使し、機能のみならず形態的にもより正常に、より美しくする治療を行っています。生まれつきの病気、生活の中でケガや病気により起こってしまったこのような状態に対し、患者様お一人お一人がより生活しやすくなるようクオリティオブライフの向上に貢献するのが形成外科の診療です。
1.粉瘤
粉瘤とは、皮膚の下にできた袋状の構造物(嚢腫)に、角質や皮脂が溜まって徐々に大きくなる良性皮膚腫瘍の一種です。アテロームや表皮嚢腫とも呼ばれ、初期には痛みやかゆみがない小さな「しこり」として現れます。炎症を起こすと赤く腫れて痛みを伴うようになります。
正確な発生機序は不明であり、毛根や皮膚が傷ついたり毛穴がふさがれることにより表皮細胞が皮膚内にたまり、嚢胞が形成されると考えられています。
粉瘤は顔や首、背中等に発症しやすく、内容物が蓄積して数センチから数十センチにまでなったり、悪臭を伴ったりすることもあります。ニキビと似ていますが、皮脂や角質が嚢胞内に蓄積することで発症する粉瘤は、細菌増殖や炎症によるニキビとは異なる別の疾患です。
軽症であれば痛みや硬化もほとんど感じられませんが、炎症を伴ったり感染が生じたりした場合は、急速に膨張しやすくなり、発赤や紅斑を伴って圧痛を感じることもあります。感染所見があれば、応急的に切開排膿を行います。再発性の高い疾患なので、自己完治することはほとんどありません。
サイズが小さかったとしても、薬剤では治療できません。良性皮膚腫瘍であり、悪性化することはほとんどありません。根治的治療は手術(保険適用)により腫瘍を摘出します。手術後、患部の傷が塞がるまでは医師の指導に従って下さい。侵襲は比較的小さな手術ですが、傷口がふさがるまで数週間かかることもあり、しばらくの間は通院が必要になります。
2.脂肪腫
脂肪腫は、皮下に発生し、脂肪細胞が良性の腫瘍としてできるしこりで、軟部組織の腫瘍のなかでは最も多くみられるものの一つです。柔らかくて痛みがないことがほとんどですが、大きくなるにつれて整容的な問題や、神経を圧迫して痛みやしびれを引き起こすこともあります。現在のところはっきりとした原因は分かっていません。
硬い、痛い、急速に大きくなるなどの場合は悪性の「脂肪肉腫」の可能性も考えられるため、医療機関で診断と適切な治療を受けることが重要です。
脂肪腫は粉瘤同様、自然治癒することはありません。また内容物が液体ではないため、注射器などで吸い出すこともできません。そのため、根治的治療は、外科手術による摘出となります。腫瘍の一部が体内に残ると再発リスクを高めるため、手術により薄い膜に包まれた脂肪腫をかたまりごと全て切除します。脂肪腫自体は良性腫瘍でゆっくりと成長します。しかし、大きな脂肪腫の中には稀に悪性のものがあるため、必要に応じ切除後に病理検査を行います。手術も粉瘤同様、侵襲は比較的小さなものですが、傷口がふさがるまでしばらくの間は通院が必要になります。
3.石灰化上皮腫
石灰化上皮腫は、毛母細胞から発生する良性の皮下腫瘍で、石のように硬いしこりになるのが特徴です。主に顔、首、腕などの若い世代(特に小児)に多く、女性にやや多い傾向があります。また、原因は不明ですが、見た目や症状によっては粉瘤などと間違えられることがあります。基本的には無症状ですが、細菌感染を起こすと痛みや赤みを伴うことがあります。治療は外科的切除が一般的で、自然に治ることはありません。粉瘤や他の腫瘍等と見た目のみで区別するのは難しいため、気になる場合は医療機関を受診し、医師の診断を受けるようにして下さい。
4.皮膚線維腫
皮膚線維腫は、皮膚にできる数ミリから2センチ程度の良性腫瘍です。肌色から茶色で、皮膚が少し盛り上がっていて、触ると硬いしこりとして感じられます。通常は痛みやかゆみはないことが多いですが、押すと痛みが生じたり、衣類が擦れて不快感を伴うことがあります。原因は一般的に、虫刺されや小さな傷、遺伝的要因が関係していると考えられています。基本的に痛みやかゆみなどの自覚症状がなく、悪性化の心配もほとんどないため、多くの場合、経過観察で問題ありません。ただ、症状がある場合や、見た目が気になる場合は、保険適用の手術で切除することが可能です。また、まれに、大きくなったり数が増えたりする「隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)」という悪性腫瘍の可能性があるため、鑑別診断のために病理検査が行われることがあります。
5.静脈湖
静脈湖とは、主に口唇や顔、耳などにできる、拡張した静脈による良性のしこりです。青紫色で柔らかく、触ると一時的に色が薄くなることが多いのが特徴です。原因は、紫外線や外傷、加齢性変化等と考えられています。通常は痛みやかゆみはないことがほとんどですが、外傷で出血することもあります。主に唇(特に下口唇)にできることが多いですが、顔、耳、首などにできることもあります。静脈湖は良性ですが、見た目が気になる場合や、出血を繰り返す場合は治療(外科的切除あるいはレーザー治療)が検討されます。
転んだり刃物で切ったりしてできた傷の処置や縫合を行います。形成外科のテクニックを用いて傷を目立ちにくく治します。砂や異物が入っている傷は医療機関での治療が必要です。鼻の骨折、やけどの治療も行っています。やけどはポットの熱湯、調理中の油、電気炊飯器の湯気、アイロンの接触など原因は様々ですが、やけどの深さ、面積、部位により治療が異なります。
けが、きずあと・ケロイド、やけどは、見た目が気になって自信が持てなくなる等の精神的側面と、関節の動きを障害する等の機能的側面で問題を生じることがあります。これらを改善することが治療の目的となります。
<治療の種類>
・ステロイド含有テープ剤:ステロイド剤を含んだテープを、きずあと、ケロイドの形に切って、患部に貼り付ける治療です。数か月かけてゆるやかに効果が現れます。
・ステロイド注射療法:ステロイドを患部に直接注射する治療法です。月に1回ほどの頻度で注射を行います。効果には個人差がありますが、良く効く方の場合、3回ほどでも効果がはっきりわかる場合があります。
・手術療法:きずあとやケロイドを外科的にいったん切除し、再度縫い直す治療法です。縫い直す時に、きずあとが目立たないように、ケロイドが再発しないよう工夫します。手術を行う場合はテープや注射の治療を併用することもあります。これを集学的治療といい、ケロイドの治療に重要な考え方になります。
巻き爪・陥入爪の手術を行います。※爪切りのみは受け付けていません。
巻き爪と陥入爪(かんにゅうそう)は、いずれも爪が変形する症状です。同じものだと思われることも多いのですが、実際は別々の症状、治療法も異なるため区別して考える必要があります。具体的には、巻き爪が「爪が内側に巻いている状態」なのに対し、陥入爪は「爪の端が皮膚に食い込んで炎症を起こしている状態」です。両者は密接に関連しており、巻き爪が陥入爪を引き起こすことも、両方が同時に起こることもあります。原因には合わない靴や深爪などがあり、放置すると痛みや感染症のリスクが高まるため、医療機関への早急な受診が推奨されます。
巻き爪の治療は、爪の湾曲を少しずつ改善させるような矯正療法がほとんどです。例えば、弾力性のあるばねの力を使って爪の両端にひっかけ、ワイヤーあるいはコイルによって、内側に巻き込まれた爪に外へ引っ張る力をかけます。なお、外的要因によって爪の形が変わっているだけで厳密には病気ではないので、巻き爪は保険適用ではなく自費診療となります。
陥入爪も巻き爪と同様に矯正法によって治療を行うことが多いです。痛みがある、赤くなっている、腫張しているといった症状があると爪囲炎を起こしている可能性が高く考えられます。化膿している場合は、軟膏処置や抗生物質の内服薬などを処方することが多いです。
<ほくろ>
「ほくろ」は、メラニン色素を生成する細胞(メラノサイト)が変化した母斑細胞が集まってできた良性の腫瘍です。形成外科では、見た目が気になる場合や、まれに悪性化する可能性があることから、正確な診断と、レーザー治療や切除手術などによって傷跡が目立たないように取り除く治療を行います。
診断:視診のほか、ダーモスコピーという拡大鏡を使って診断する場合もあります。時には、悪性腫瘍との鑑別が必要な場合もあります。
治療:ほくろの大きさ、深さ、場所、そして美容的な観点から、主に以下の方法が選択されます。
・レーザー(CO2レーザー)治療:比較的小さく、皮膚の浅い部分にあるほくろに適しています。小範囲ですが局所麻酔を行い痛みを抑えることが多いです。
・切除術(保険診療):ほくろが盛り上がっている場合や、大きい場合、悪性を疑う所見がある場合、手術で切除し縫合します。切除した組織を病理検査することができます。傷跡が目立たないように工夫されます。
<いぼ>
いぼとは、皮膚の表面に隆起するいわゆる「できもの」を指し、一般的にヒトパピローマウイルス(HPV)感染などが原因で、皮膚にできる良性の隆起物の総称です。形成外科では、液体窒素、レーザー、電気メス、切除などの方法で治療を行います。見た目の問題だけでなく、衣類に引っかかるなどの日常生活上の支障がある場合も、治療の対象となります。
ほくろ同様、治療法は下記2つとなります。
・レーザー(CO2レーザー)治療:小範囲ですが局所麻酔を行い痛みを抑えることが多いです。
・切除術(保険診療): 軟性線維腫で有茎性である場合は、茎部を切っていぼを切除します。大きい場合、悪性を疑う所見がある場合、手術で切除し縫合します。切除した組織を病理検査することができます。傷跡が目立たないように工夫されます。
目立つ傷を、目立ちにくい傷にする修正術を行っています。
糖尿病や血管閉塞にともなう難治性潰瘍、褥瘡などに対する治療を行います。
局所麻酔の手術を中心に行っています。
全身麻酔が必要な手術は、大学病院など他院へ紹介をします。術後のフォローアップは当院で行うことが可能です。
日常生活でけが・やけどを負った場合、自分自身で絆創膏を貼って治すこともあると思います。形成外科では専門的な技術や最新の絆創膏を用いて治すため、治る期間が短くて済み、結果、傷跡も目立ちにくくなります。血が多く出ていて受診が必要か迷う、切り傷がなかなか治らない、子供が転んで顔をぶつけて心配、など迷う際は『困ったら形成外科』と気軽に相談・受診いただけるような形成外科でありたいと思っています。
何か皮膚の奥の方にできものができていて(皮下腫瘍)、不安や不便を感じるようであれば悩まずにぜひご相談ください。
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